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岡山大学農学部の講義に参加しました

2020(令和2)年11月28日(土)岡山大学農学部にて開催された『露地野菜作経営の大規模化と経営革新-需要構造の変化とスマート農業-』の講義へ講師として、倉敷青果荷受組合 理事長 冨本と農地所有適格法人クラカアグリ 牛丸が、参加いたしました。

その他にも有限会社エーアンドエス 大平貴之 社長、株式会社指宿やさいの王国 吉元龍馬 社長と有馬亮 GAP責任者が講師として参加されていました。

 

 

まずは今回のコーディネーターである岡山大学農学部 大仲克俊 准教授からご挨拶があり、本講義のテーマの紹介がありました。

■露地野菜作は家族労働力を基本とする農業経営体が多くを占めていた

■農業者の減少が進む中で、露地野菜作でも大規模化が進展している

■加工・業務用野菜の需要拡大

■定時・定量・定質・定価格+αが求められる

■単純な農業生産の大規模化だけでは対応できない

 

また学生に向けて「レポートを提出してもらうのでしっかりメモするように!」と注意があり、学生の表情に緊張が走りました。

学生以外にも、農業関係者と思われる方々も多く参加されていました。

 

 

 

最初の講義は有限会社エーアンドエスの大平社長が行いました。

エーアンドエスは2003(平成15)年に設立、平成22年より岡山県笠岡市にて自社農地2ha(ヘクタール)から経営を始め、現在は借入地を含め70haを超える面積を確保しています。

(マスカットスタジアムのある倉敷スポーツ公園が敷地約19ha、倉敷イオンモールが敷地約16ha)

そんな広大な農地で、パート含め40名前後の従業員で生産性を確保するには、大型機械の導入とスマート農業による省力化だと説明されていました。

 

■『キャベツ全自動収穫機』を導入することにより収穫作業の省力化

今まで20人前後で収穫(20~30t)していた作業が、3~4人で圃場の端から一斉収穫可能になりました。ただし、収穫機はキャベツの生育状態を判断できないので、斉一な生育が絶対条件となります。

 

■底面給水システムを導入することによる斉一育苗

斉一な生育を行うには、まず斉一な育苗が必要となります。毎朝4時半に手作業で給水を行っていた大平社長ですが、数年後には体がついていけなくなると導入を決意。環境制御コントローラ(YoshiMax)が、誰でも斉一育苗できるよう自動化します。

 

■レーザーレベラー、定植機、中耕機、追肥機等の大型機械の導入

斉一に生育させるには均一な圃場環境や追肥が必要となります。

レーザー装置の自動制御によって土表面の傾斜を均一に整備し(200mを1%以下の誤差で作る)排水対策を行います。根も息をしているので水が溜まると息が出来なく枯れてしまいます。また、大型定植機やGPS車速連動幅広ソワー(高速追肥機)、高精度中耕機を導入することで、省力化と作業の均一化を図り、斉一な生育を実現できるとのことです。

ただしこれらの大型機械はコストがかかります、ですのでキャベツや玉葱問わず全ての圃場規格を統一し、常に機械をフル稼働させることが重要だと説明されました。

 

■作業管理システム(アグリノート)の活用

大型機械の導入だけでは省力化は行えません。適切な人員配置と、効率の良い機械の稼働計画が必要です。それを実現するのがアグリノートです。

生育や作業状況をデータ化することで、計画が作成できます。

エーアンドエスでは、1日2hの玉葱を植え、収穫期には1日250tを収穫する時もあるとのことです。ですがその収穫期は梅雨の時期となるため、雨天の収穫作業は効率が悪く、雨の日は屋内で選別作業を行うなどの分業計画を作成し、生産性を上げているとのことです。

 

南瓜の栽培から始めたエーアンドエスですが、現在では輸入野菜の国産化を目指してキャベツ・玉葱の栽培を行い、市場流通を極力避け、加工・業務用野菜の契約栽培に特化した生産形態に取り組んでいます。

2020(令和2)年3月には、農林水産省の実施する『スマート農業技術の開発・実証プロジェクト』に採択され、まさに岡山県のスマート農業先進企業だと言えます。

 

 

続いての講義は株式会社指宿やさいの王国 吉元社長と有馬GAP責任者が行いました。

指宿やさいの王国は2012(平成24)年に設立され、鹿児島県指宿市の本土最南端に所在し、耕地面積は借入地あわせて約170haですが、それぞれの区画は小さく、全体で約650区画(枚)という膨大な区画を40人前後の従業員で栽培しています。

やはりそこにはスマート農業化が不可欠で、指宿やさいの王国ではファームレコーズ(Farm Records)というシステムを活用し、2020年にはGLOBALG.A.P.(グローバルギャップ)認証を取得(食品安全、労働環境、環境保全に配慮した「持続的な生産活動」を実践する優良企業に与えられる世界共通ブランド)、外資系のレストランチェーン向けの取引も拡大しています。

温暖な気候から厳寒期にキャベツ・レタス類の露地栽培が可能とのことで、2014~2015年に第一・第二冷蔵庫(約370㎡、5℃以下冷蔵可能)を設置し、2020年には真空予冷設備を導入、品質向上のためのコールドチェーン化を進め、加工・業務用野菜の出荷を増加させています。

事業の多角化にも積極的に取り組んでおり、運送事業部門を立ち上げ、九州管内の往路で自社生産物を消費者へ届け、復路で農業資材や雑貨などを運ぶことでコスト削減と流通の効率化を図り、台風の影響で幾度なく損傷するハウスを自社で迅速に修理するため、建築会社を立ち上げました。

吉元社長は生産法人から多角化経営体を目指し、5つのステージに分けて目標を立てています。

■ステージ1.生産(創業期)

品目:オクラ、カボチャ、スナップエンドウ。地域の農協や地方卸売市場などに出荷。

 

■ステージ2.販売(規模拡大)

品目:現在の主力である、キャベツ、レタス類の栽培。流通業者を介さない直接取引を増加。

 

■ステージ3.流通(大規模生産)

葉菜類でGLOBALG.A.P.認証取得、契約栽培へ移行。冷蔵、予冷施設を拡大、10t冷蔵トラックをチャーターしコールドチェーンを確立。

 

■ステージ4.建設(多角化)

運送事業部門を立ち上げ流通の効率化、建設会社を立ち上げ迅速な修理対応をできるようにする。

 

■ステージ5.人材(5本柱へ)

スマート農業の実用的な実践。海外からの労働者も含む有料職業紹介事業及び技能実習生管理団体を創設し、今後急激に進む労働人口減少に対応する。

 

前職では介護事業を行い、異業種から農業参入した吉元社長だけあり、農業生産だけにとらわれない発想をお持ちだと感じました。

そんな吉元社長ですが、今一番の課題は人材集めだということです。指宿市の人口は約4万人で(倉敷市は約47万人)、その中で農業の担い手を探すのは非常に困難だということです。そこで、2021年は職業紹介事業及び技能実習生管理団体を創設し、人材集めと育成に力を入れたいということです。

 

 

最後の講義は倉敷青果荷受組合 理事長 冨本が行いました。

今回は岡山県倉敷市にある卸売市場(中間事業者)として、『加工・業務用国産野菜 生産利用拡大に向けて』の取り組みを説明させていただきました。

 

高齢化や女性の社会進出、単身世帯の増加により食の外部化、外食(飲食店)・中食(加工食品)の需要が高まり、それと共に加工・業務用野菜(カット野菜)のニーズも益々増加しています。コロナ禍の影響で内食(家庭内調理)に需要が一時戻りましたが、GoToEatやGoToトラベルにより再び外食・中食へのニーズが増えています。

そんな加工・業務用野菜ですが、求められるのは定時・定量・定価格・定品質、そして低価格も求められています。しかし、価格や出荷量、品質が安定しない国産野菜だけでは安定供給できず、一部輸入野菜に頼っています。低価格なら輸入野菜でも良いという実需者もいますが、やはり国産野菜への要望が多くあります。そこで生産者との契約取引を行うことで、安定供給と、市場価格に左右されない生産者の生活安定を築きつつあります。

 

さらに契約取引のモデルとして、2016(平成28)年にクラカアグリ株式会社を設立し、岡山の中山間地域を含め、露地野菜の栽培を行い地域農業の支援も行っています。

岡山県新見市ではクラカアグリの支援によって生産売り上げが約1,000万に伸び、地域生産者の活性化にもつながっています。

2020年度中に青ネギの集出荷貯蔵施設も建設中で、国産野菜の供給量を増加させる計画です。

 

 

講義後、ゲストとして参加されていた早稲田大学名誉教授 日本農業経営大学校 堀口健治 校長から総括をいただきました。

需要が増加する加工・業務用野菜と、それに必要不可欠な露地野菜作生産者、そしてその生産者の未来を切り開くであろうスマート農業。しかし、重要な問題は生産者の高齢化と担い手不足。

堀口校長はそんな未来の担い手を育成し、農業経営者としての技能と知識を教えています。今後人口が減少し、高齢化が加速していく中、外国人技能実習生の力を借りないと日本の農業は維持できないと予測されます。そのリーダーシップを取れる人材育成こそが必要不可欠です。

エーアンドエス 大平社長と指宿やさい王国 吉元社長はまさにその見本となる経営者だと感じます。

本日の講義に参加した学生には、是非その未来の担い手となる経営者を目指してほしいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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