岡山県農林水産総合センター農業大学校で講義をいたしました(2023年)
2023年(令和5)6月9日(金)、岡山県赤磐市にある「岡山県農林水産総合センター農業大学校」にて、クラカグループ専務の冨本と、クラカアグリ課長の牛丸が特別講師として登壇いたしました。
本校は、将来の岡山県農業を牽引する青年農業者を育成する教育機関です。例年、現場の最新ノウハウを届けることで次代の力になれればと、講師として協力させていただいています。

「食の外部化」と卸売市場の新たな役割
専務の冨本からは、『生産物流論』をテーマに講義を行いました。
単身世帯の増加、女性の社会進出、高齢化などによる生活スタイルの変化に伴い、家庭で調理する「内食」から、中食・外食といった「食の外部化」が進行しています。これに伴い、野菜の需要も家計消費用から加工・業務用へ大きくシフトしており、今や需要の約6割が加工・業務用です。
私たちはこの変化を先取りし、従来の卸売に加え、生産地と一定価格・量を結ぶ「契約取引」を推進。国産野菜の安定供給体制を構築することで、変化する時代のニーズに応えています。
また、日本の食料自給率の課題や、特定国への依存によるリスクなど、食糧安全保障の観点からも熱く語りかけました。農業事業者が競争力を高め、生産性を向上させることは、これからの豊かな国づくりに不可欠な使命です。


※農林水産省 平成28年3月「我が国の食生活の現状と食育の推進について」より
クラカグループは、野菜の需要変化をいち早く捉え、1998年(平成10年)に加工・業務用部門として「カット野菜部」を設立しました。
本来、卸売市場では需給バランスによって価格が決定されますが、従来の仕組みだけでは、実需者の皆様が求める4定『定時・定量・定価格・定品質』にお応えすることが困難でした。
そこで、生産地と一定の価格および量で仕入れる契約取引を導入しました。これにより、安全・安心な国産野菜を安定的に供給し、「4定」というニーズに応えられる体制を整えています。
この契約取引は、生産者の方々にとっても、市場価格の変動に左右されず安定した収入が見込めるため、農業経営の安定化という大きなメリットにつながっています。

生産地においても、近年の需要変化に伴い、加工・業務用野菜の生産が増加しています。卸売市場を取り巻く販売形態も変革の時代を迎えており、いかに変化するニーズへ適応していくかが重要となっています。
こうした中、クラカグループでは加工・業務用野菜への対応として、国産玉ねぎの周年安定供給体制を確立しました。
具体的には、収穫時期の異なる各産地と連携したリレー出荷に加え、病害リスクの高まる7月・8月には、農林水産省の補助事業を活用して整備した集出荷貯蔵施設内の冷蔵貯蔵品を活用しています。これにより、年間を通じて安全・安心な国産玉ねぎの供給が可能となりました。

安定供給の議論は、災害や不測の事態における「食糧確保」の重要性へとつながります。現在、日本の食料自給率はカロリーベースで38%に留まっており、決して楽観視できる状況ではありません。
※農林水産省 令和4年8月「令和3年度食料自給率・食料自給力指標について」より
野菜についても、国内生産が8割、輸入が2割という内訳ですが、たまねぎ、にんじん、ねぎ、ごぼうなどの輸入先は96%以上が中国に集中しています。特定の国への過度な依存は、食糧安全保障の観点から非常にリスクが高いと言わざるを得ません。
※農林水産省 令和3年4月「加工・業務用野菜をめぐる状況」より
さらに懸念されるのが「肥料」の問題です。化成肥料の原料となる尿素やリン酸などの大半を輸入に頼っている現状では、外交関係の悪化などが肥料供給の停滞を招き、結果として食料自給率が極端に低下するリスクも否定できません。

※農林水産省 令和5年6月「肥料をめぐる情勢」より
この課題を克服するためには、国内農業の競争力を高め、増産体制を整えることが不可欠です。転機となったのは2009年(平成21年)の農地リース方式の全面解禁です。
これにより法人の農業参入が加速し、現在では全国の耕地の約3割が企業によって運営されるまでになりました。農地の大規模化が進んだことで、かつて課題とされていた採算性の低さも改善傾向にあります。

※農林水産省 令和4年8月「リース法人への農業への参入状況(令和4年1月1日)」より
しかし、国際比較を行うと日本の農業の労働生産性には依然として改善の余地が大きく残されています。

※農林水産省 令和4年8月「労働生産性の国際比較2022」より
主要先進国と比較すると、日本は依然として見劣りする結果となっています。
冨本は、「食料自給率の向上は、豊かな国づくりに直結する重要な課題である」と次世代を担う生徒たちに強く訴えかけ、講義を締めくくりました。

農業の最前線!クラカアグリのスマートな挑戦
休憩を挟み、続いて牛丸による講義が行われました。
まず最初にクラカアグリの事業内容を紹介する動画を視聴したあと、昨年(2022年)に策定された経営理念、経営基本方針、および行動指針についての説明がなされました。

策定に至った背景には、2016年の設立から6年が経過し、売上や従業員数が増加する中で、組織として全員が同じ方向を向いて進むことの重要性を感じたことがあります。
「どのような思いで農業に向き合うか」「どのような会社にしたいか」「どのような人物を目指すべきか」。これらを社員一人ひとりに問いかけ、全員の想いを反映させた内容となっており、2023年4月からこの指針に基づいた行動がスタートしています。
牛丸は自身の歩みについても触れました。設立当初、従業員は牛丸一人、農地も農業機械もない「ゼロ」の状態からのスタートでした。
しかし、地権者の皆様や農機具メーカー、そして数多くのお客様に支えられ、現在は農地所有適格法人として認定農業者の資格を取得し、計画的な農業生産を行えるまで成長しました。
こうした経験を経て、牛丸は「お世話になった方へ、しっかりと言葉で『ありがとう』を伝えられる人物であること」を行動指針の柱の一つに据えました。
そして、講義はより具体的な実践内容へと移りました。
クラカアグリでは、遊休農地や水田を活用した露地野菜の生産に取り組んでいます。お借りしている農地のほぼ100%が水田であるため、畑に比べて水はけが悪いという課題がありました。これを克服するために、以下の排水対策を徹底しています。
- 高畝整形機による高畝作り
- 圃場の周りに溝を掘り早く排水ができるようにする額縁明渠作り
- 地中約50cmに暗渠を作り水が抜けるようする補助暗渠作り

また、土壌の「物理性・化学性・生物性」のバランスを整えるため、近隣農家から提供いただく牛糞堆肥をはじめ、袋堆肥やバーク堆肥を積極的に活用しています。
水田の跡地は当初、土が硬く作付けに適さないこともありますが、時間をかけて堆肥を投入することで、数年後には理想的な土壌へと生まれ変わります。
すぐに結果が出るものではありませんが、着実な土づくりこそが良い野菜への近道であると信じています。

現在、加工・業務用としてキャベツ、青ネギ、玉ねぎを栽培しています。
特にキャベツは反収(10aあたりの収穫量)を高めるため、通常の約1.3kgを上回る2〜3kgの大型サイズを生産し、1日あたり約10tを収穫する体制を構築しました。
今後の生産計画も順調で、2023年度の合計1,179tに対し、2026年度には1,939tまで拡大を見込んでいます。

この拡大を支えるのが「スマート農業」の推進です。
クラウドサービス「アグリノート」を導入し、岡山県内6地域にまたがる圃場の品種や生産履歴を一元管理しています。
かつては事務所に戻りPCでExcelを確認していましたが、現在はスマートフォンで情報の閲覧・共有がリアルタイムで行えるようになり、業務効率が格段に向上しました。

地域支援の取り組みとして、岡山県新見市大佐地区での生産支援も行っています。
圃場準備から出荷までを伴走し、必要に応じて現地指導を行うほか、遠隔地からは送られてくる画像をもとに生育状況をサポートします。
アドバイスに従って栽培された結果、初年度から立派なキャベツの収穫と収益化に成功し、地域の生産力向上にも貢献しています。

また、スイートコーンの生産・販売は3年目を迎えました。
初年度の卸売、2年目のネット販売を経て、今年は直接お客様へ届ける「直販」を開始します。
「今年も美味しいスイートコーンを頼むよ」というお客様からの声は、何よりの励みです。消費者とのつながりが深まるたびに、農業の大きな可能性を実感しています。

講義の最後に、牛丸は学生たちへ向けてこう語りました。
「農業大学校を卒業した後も、ぜひ生産現場への関心を持ち続けてください。皆さんの未来の就職先の一つとして、農業を前向きに検討していただければ幸いです」

講義の締めくくりとして、質疑応答が行われました。
学生からはキャベツの品種特性に関する専門的な質問から、現場で直面する苦労話、さらには異物や異種野菜の混入を防ぐ品質管理体制に至るまで、多岐にわたる活発な意見が交わされました。
学生の皆さんには岡山県の農産物の生産拡大に向けて農業大学校で一生懸命勉強に励み、日本の国の食糧安全保障の観点からも頑張っていただければ、と思います。
また、今回の講義が皆さんのお役に立てれば幸いです。
ご清聴ありがとうございました。








